
最後に待っていたのは剣岳
朝もやに光が差し込む。
まぶしい。
それは朝の光。
山の谷にあった立山駅から高原の美女平に上がってきた証拠でもあった。
美女平から散策に出かける人々も多いが僕らはなにはともあれ室堂を目指していた。
だからそのまま高原バスに乗り込む。
高原バスは窓が開け放たれ高原の空気に満ちていた。
気持ちがいい!まさに避暑!!
僕らはうかれずにはいられなかった。
そしてこの高原バスには室堂まで「50分」乗車することになるという。
その長さもまたワクワクを増幅させた。
バスは走り出した。
風を切ってバスは進む。
窓からは涼しい風とともに水滴も入り込んできた。
何だろうと思ってよく外の木々を見てみるとうっすらと白くなっている。
霜がどうやら降りていたようだ。
さすがは高原と感心した。
バスはスピードを緩めた。
称名滝が見えるという。
光があふれてよく見えないけれど、よーく目を凝らしてみると・・・

※うっすらと称名滝
見えた!!
落差350mを誇る日本一大きい滝である。
そしてバスはさらに進む。
大きい木があった。
「森の巨人たちの百選」に選ばれた由緒ある木らしい。
そんなすばらしい木なのだけどバスは称名滝ではあんなにやさしくスピードをダウンしてくれたのに
この木ではまったくスピードを緩めてくれなかった。
だから僕は来たものを一期一会でバシャリ!と撮るしかなかった。
それはそれで興奮できた。

※大きい興奮、バスが止まらない興奮
バスは森の中ばかりを走っていたが、ついに景色が開けた!

目に飛び込む山。
雪が残っている。まるで絵のようだ。
しかも現れたのは反対側の窓。
人の頭の間や窓の隙間から見えたり見えなかったり・・・もどかしい。
・・・もどかしいけど・・・それがなんともいい。
このもどかしさこそ記憶に残る。
もどかしい視界の中で見た景色こそ僕の大事な山との出会いの景色に違いないからだ。
バスは弥陀ヶ原に入ったようだった。
緑の平原が広がる。

※グリーンカーペット
天気は晴れ。
曇りのち晴れの天気予報だったが、晴れてくれた。
空気の層が遠くに見えた。

そして餓鬼田という池みたいなのを見つつ高原バスはいよいよ室堂へ高度を上げていく。
この頃になると涼しいというか寒くなり、ほとんどの人は窓を閉めていた。
そういう僕も窓を閉めたのだが、前の人が閉めなかったのでその風にガタガタ震えていた。
僕は少々避暑どころではなくなっていた。

※ぽつぽつとある池を餓鬼田というそうな
ガタガタ震える僕の窓側に現れたのはソーメン滝。
それは地獄谷から流れ落ちている滝とのこと。
その姿はソーメン。みたまんま・・・
そしてその水は称名滝へと流れ落ちる。

※落差130m ソーメン滝 上のモクモクは地獄谷のそれ
ソーメン滝を見たその直後、それは姿を現した。
尖った山頂、黒い山肌、その特徴的なフォルムは人々を惹きつけてやまない。
剣岳だ。
僕は高校の時この山を家族で2泊3日で登った。
はじめての泊りがけの山だった。
そして晴天だった。
一日目にたどり着いたテント場から翌日昇ることになる夕日に燃える剣岳を見続けた。
その想いは今も胸に焼きついている。
その後天候が崩れ剣岳は雲に覆われ夜には暴風となった。
テントが吹っ飛ぶかと恐れながら、僕は地面に這い蹲るように寝た。
そして翌朝。
暴風なんてなかったかのように剣岳は平然とそこにあった。
雲はどこかへ吹き飛んでいた。
昨夜の暴風は剣岳からの僕へのちょっとしたプレゼントのようにも感じた。
その大きさ、その迫力、その質感に打ち震えながら、僕は登山を開始したのだった。
そして2999mの山頂で胸の辺りが丁度3000mになる!とはしゃいだ。
そんな思い出の剣岳がふたたび目の前に現れた喜びは言葉に表しようがなかった。
ただ「剣!剣!」と隣にいるkozo君に指差して教えて興奮していた。

※剣岳なり
そして剣岳を目撃した興奮のままにバスは室堂へ到着するのだった。
今回の移動「美女平」~「室堂」

※確認
- 2008/08/05(火) 00:03:40|
- 2008.7 立山を突き抜けて
-
| トラックバック:0
-
| コメント:20
剣岳には早月尾根から登りました・・・
岩の技術がないと登るのが難しい山ですねぇ~・・・
空海が草鞋3000足を履きつぶしても登れなかったのが良く判ります・・・
- 2008/08/05(火) 06:51:29 |
- URL |
- 我楽多 #kTvoSsVA
- [ 編集]
黒部ダムは中学の修学旅行で行きました。
大昔ですけれど・・・
山の色や空、大木は、都会ほど変ってないと思います。
思いたい。
ウナム君の写真からは、そう見えます。
一気にクールダウンしました。
久しぶりのコメですが、ずっと見ていますよ。
進化遂げるウナム君の熱のこもった文章楽しみにしていますね。
- 2008/08/05(火) 18:22:32 |
- URL |
- ma #halAVcVc
- [ 編集]
寒さで震えたい!!(笑)
やっぱり高地は寒いんですね、下界は茹だる様な暑さだというのに(ー。ー)フゥ
しかしバスの車中から滝や木を見事に
ゲッチュウされましたね、流され撮りですね(ΦωΦ)ふふふ・・・・
- 2008/08/05(火) 19:25:35 |
- URL |
- こーちゃん #-
- [ 編集]
朝の光の輝きが美し~です
晴れてよかった!
「うっすらと称名滝」の光る鎖と影がステキ。
称名滝の圧倒される姿を間近で見て、
何枚撮るの?ってくらい撮ったことを思い出しながら、
“うっすら”に目を凝らしました^^
人と人との間からの風景も、空気の層も
ステキなお写真と、すばらしい文章での描写で
なんだか高原バスに乗ってる気分になりました。
「続き」早く見たいです♪
- 2008/08/06(水) 01:16:59 |
- URL |
- Fmi #3gnf69lI
- [ 編集]
避暑に成功した興奮がよく伝わってきました
見せてもらった景色はわたしが『山』と聞いて思い浮かべる憧れの景色そのもの
うっすらと称名滝の写真がとってもいい

って思った
- 2008/08/15(金) 22:39:26 |
- URL |
- someday #-
- [ 編集]