金曜日だった。
太陽がビルの後ろに隠れようとする頃、用事があって病院に来ていた。
僕らの仲間はその日の18時から面会の自粛が解除されるはずだった。
病院の前まで来たとき、遠くで人影が動いた。
K先輩の親父さんだった。
親父さんは手招きして「Kに会ってってやってくれ」と言った。
自粛中だったが、親父さんに言われた手前、行かない理由はなかった。
エレベータで上る。
廊下を歩く
受付の前を過ぎる
右に曲がる。
先輩の個室があった。
ドアを開ける。
白い部屋があった。
先輩がいた。
そこにいた。
先輩の好きだった音楽が空気に色をつけていた。
シュコン
シュコン
シュコン
音にあわせて先輩の胸が上下していた。
先輩のまわりには僕らの写真が飾ってあった。
肌はサイパンで焼けたままの褐色で
目は開けないのに、肌だけは日焼けは剥け始めていた。
本当にただ寝てるだけのように見える。
でも口から体からいろんな管が出ていた。
ちょっと臭いもした。
体中の筋肉が重力に負けていた。
何か話しかけようかと思ったけど、またのどが熱くなって声が出なかった。
「どうよ、ヒロシ、最近コレは」とカメラを構えるポーズをする先輩の姿
「ウナムのまなざし、俺、北京のが好きだな」といっていた先輩の姿
思い出される姿
心の奥で波が騒いだ。
- 2009/10/06(火) 20:42:25|
- 三本のポジフィルム
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